最先端を追いかけるより、AIを自分の道具として使える人と会社を増やしたい。
最近、AIの進化がますます速くなっていると感じます。新しいモデルが登場したと思ったら、また別の会社が新しい機能を発表する。できることが増えて、精度も上がっていく。もちろん、それ自体は素晴らしいことだと思います。
でも、そんなニュースを見ながら、ふと考えたことがあります。
これから先、AIの進化は、使う人が求める水準を追い越していくんじゃないだろうか。
技術が、顧客のニーズを追い越す
以前読んだ、細谷功さんの『「無理」の構造』という本に、印象に残っている図があります。
技術や機能は時間とともに向上していく。一方で、顧客が求める水準には、それとは違う伸び方がある。やがて、技術の機能性が顧客ニーズを追い越す。僕は、その図をそんな構造として受け止めています。
例えばテレビ。4K、8Kと技術は進化していますが、僕自身は、今のところ8Kのテレビがどうしても必要だとは感じていません。
もちろん、必要とする人もいるでしょう。でも、ある人にとっては、今の画質で十分満足している。技術的にもっとできることと、本人が本当に必要としていることは、必ずしも同じではないんですよね。
僕は、AIもいつかそういう局面に入るのではないかと考えています。
例えば、自分のやりたいことが10個あるとします。今のAIでも、そのうち8個くらいは、工夫すれば実現できるかもしれない。そこからAIが進化して、15個、20個のことができるようになったとしても、本人がやりたいことは10個のままかもしれません。
これは、実際の性能や達成率を示す数字ではなく、考え方を伝えるためのイメージです。AIの精度や安全性がまだ足りない領域もありますし、できることが増えることで、やりたいこと自体が変わる場合もあると思います。
それでも、技術がどこまで進化したかより、自分がやりたいことをどこまで実現できるかの方が、多くの人にとって大切になっていくのではないでしょうか。これは、僕自身の未来予測であり、仮説です。
僕は、AIの最先端を追いかける人になりたいわけではない
新しいAIの情報を知ることは大切です。僕も必要な情報は、これからも学び続けます。
ただ、最新のモデルや機能をすべて追いかけることを、自分の仕事の中心にはしたくないと思っています。なぜなら、僕が本当に増やしたいのは、AIを自分の道具として使える人だからです。
AIの仕組みを全部理解していなくてもいい。専門用語を覚え尽くさなくてもいい。
自分の仕事で困ったことがあったときに、「これ、AIで何とかできないかな?」と考えて、自分で調べたり、相談したり、試したりできる。そして、うまくいかなければ、また違うやり方を試せる。
そんな力があれば、AIが今後どれだけ進化しても、自分なりに付き合っていけると思うんです。
個人にも、会社にも、自分で使える力を
僕が運営しているYCBは、経営者自身がAIと付き合いながら、自分の仕事で試していく場所です。
AIの進化を一人ですべて追いかけるのではなく、仲間と話し、相談し、実践を持ち寄る。その中で、「こんなこともできそうだ」「次はこれをやってみたい」という気持ちが生まれていく。そんな場を育てていきたいと思っています。
一方、YBBは会社のための支援です。こちらでは、経営者の希望と現場の仕事を見ながら、社員の方と一緒にAIを使う入口を探します。
でも、僕がずっと会社のAI担当者であり続けたいわけではありません。
最終的には、担当社員が自分でAIを使い、困ったら調べ、次の仕事にも応用できるようになってほしい。僕がいなくても、自分たちでAIを使って仕事を前へ進められる会社が増えたら、それはすごくいいことだと思います。
もちろん、複雑なシステム開発や高度な技術が必要なら、その専門家の力を借りればいい。必要に応じて、適切な専門家と協業する。僕自身がすべてをつくる必要はありません。
僕が関わりたいのは、むしろその手前。これまでAIを使っていなかった人や会社が、最初の一歩を踏み出すところです。そして、一度きりの体験で終わらず、自分たちの仕事の進め方として使えるようになること。そこに、僕は面白さを感じています。
AIの進化を、人と会社の可能性につなげたい
これからAIがどう進化していくのか、正確な未来は分かりません。ただ一つ、今の僕が考えていることがあります。
AIの性能が上がることと、人や会社の可能性が広がることは、同じではない。
技術的にできることが増えても、それを知らなかったり、使う機会がなかったり、会社の仕事に取り入れられなかったりすれば、その可能性は現実の仕事につながりません。
だから僕は、最新の技術を競う側ではなく、その技術を人と会社の力につなぐ側にいたい。
YCBでは、経営者自身がAIを自分の道具として使えるように。YBBでは、会社の人たちが自分たちでAIを使い、仕事を改善できるように。
どちらにも共通しているのは、AIに判断を預けきることでも、僕に依存することでもなく、自分たちでできることを増やしていくという考え方です。
僕が目指しているのは、自分も、周りの人も自由で、自分の意思で選択できる世界です。だから、AIを使うこと自体を目的にはしません。
AIが進化するほど、僕はそこを大切にしたい。そして、一人でも多くの人が、自分の意思で次の一歩を選べるようになったらいい。
AIで、人と会社の可能性は広がる。その言葉を、これからも現場で確かめていきたいと思います。
合同会社sIn
AIビジネスコネクター|長嶋 泰人
この考え方を、実践する場へ
自分の仕事で仲間と学び、相談し、試していきたい方へ:YCB|AI × 経営 × 実践コミュニティ
経営者と社員・現場で、会社の仕事を一緒に改善していきたい方へ:YBB|企業AI導入・組織づくり支援
参考書籍
細谷功 著『「無理」の構造―この世の理不尽さを可視化する』(dZERO、2016年)。出版社の書籍紹介
書籍への言及は僕自身の読書からの受け止めです。AIへの当てはめや未来についての考えは僕自身の仮説であり、著者のAIに関する見解を紹介するものではありません。